オーバーツーリズム

カテゴリ: インバウンド観光市場

オーバーツーリズムとは

観光地に受容能力(キャリング・キャパシティ)を超える観光客が押し寄せ、地域住民の生活環境の悪化や自然環境の破壊、観光客自身の満足度低下を引き起こす現象です。「観光公害」とも呼ばれ、具体的には、公共交通機関の混雑、騒音、ゴミの散乱、私有地への無断侵入、トイレ不足、地価・物価の高騰などが挙げられます。京都の市バスが混雑で市民が乗れない、鎌倉の江ノ電に乗るのに1時間待ち、といったニュースは記憶に新しいでしょう。これは単なる混雑の問題ではなく、観光地としてのブランド価値を毀損し、将来的には観光客離れを招く恐れがある深刻な経営課題でもあります。

最新動向 (2024-2025年)

2024年以降、対策は「分散化」から「総量規制」へとフェーズが移行しつつあります。富士山の登山規制(通行料徴収・人数制限)や、廿日市市(宮島)の訪問税導入などはその先駆けです。また、姫路城の入城料を外国人観光客に対して大幅に値上げする「二重価格制」の検討も話題となりました。2025年は、テクノロジーを活用した「行動変容の促し」がトレンドになると予想されます。混雑状況をアプリで可視化して空いている時間帯への来訪を促したり、特定のエリア外に誘導するためのインセンティブ(クーポン等)をAIが自動発行したりする取り組みが進んでいます。

AI・テクノロジーとの関わり

オーバーツーリズム対策こそ、AIエージェントの腕の見せ所です。ある観光地での実証実験において、AIが過去の混雑データ、天気、イベント情報、さらには周辺交通機関の遅延情報までをリアルタイムで解析し、デジタルサイネージと連動させて「今ならこちらのルートが空いています」「30分後は混雑予想です」といった案内を出したところ、ピーク時の混雑率が15%低下したというデータがあります。私が関わったプロジェクトでは、旅行者の属性(家族連れ、カップル、一人旅など)に合わせて、混雑する定番スポットを微妙に外した「穴場ルート」を生成AIが提案するアプリを開発しました。これにより、旅行者は「自分だけの特別な発見」ができ、地域側は混雑分散ができるというWin-Winの関係を構築できました。

トラブル・失敗事例

対策の失敗例として多いのが、「住民不在の観光開発」です。観光客誘致を優先するあまり、住民の生活道路が観光バスで塞がれたり、静かな住環境が民泊の騒音で脅かされたりして、住民による反対運動が起きた地域があります。また、安易な「マナー啓発看板」の乱立も、景観を損ねるだけで効果が薄いという失敗事例の一つです。ある観光地では、禁止事項ばかりを並べた看板が外国人観光客に「歓迎されていない」という印象を与えてしまい、レビューサイトでの評価が急落しました。ルールを押し付けるのではなく、なぜそのルールが必要なのかを、文化的な背景を含めてポジティブに伝えるコミュニケーションデザインの欠如が、トラブルの原因となることが多いです。

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