AI株安でも円は守りになるか ゴールドマンの見方

AI株安でも円は守りになるか ゴールドマンの見方

ニュースの概要

ゴールドマン・サックスが、AI関連投資への不安で世界の株式市場が揺れる場面で、円が損失を和らげる備えとして使いやすくなっているとの見方を示した。理由は日本の政策環境の変化にある。世界の長期金利が上がる局面でも、円だけが急に売られるおそれは以前より小さいという。実際に、AI投資ブームへの警戒から株が売られ、米国債が買われた局面では、円はドルに対して上昇し、1か月超ぶりの高値圏に入った。円は安全な通貨とされながら、金利上昇時には売られやすいという弱点を抱えてきた。今回の分析は、その弱点が薄れつつある可能性を指摘している。ただし、これは一つの見方であり、円高が続くとは限らない。

引用元: ゴールドマン・サックス、AI市場ショックへの円のヘッジ機能が改善と分析(The Japan Times / Bloomberg)

分析・見解

円が株安の逃げ場になれない時期があった

円は長く、市場が不安定になると買われる通貨とされてきた。株が荒れると、海外で運用していた資金が円に戻りやすいからである。ところが近年は、この定石が崩れる場面があった。世界の長期金利が上がると、日本との金利差が広がり、円が売られたのである。2022年は株も債券も下がるなかで、円は大きく売られた。株安と円安が同時に来れば、円は守りにならない。ヘッジ(=損失を和らげる備え)として使いにくいという評価は、ここから来ている。

変わったのは円の向きではなく下がり方

ゴールドマンが挙げる理由は、日本の政策環境の変化である。日本銀行が超低金利を続ける前提が薄れ、国内の金利にも上昇の余地が見えてきた。すると、海外の金利が上がっても、日本との差が一方的に開きにくい。円だけが急落する圧力は弱まる。ここは誤解しやすい点だ。円が必ず上がると言っているのではない。円が下がるときの勢いが、以前より穏やかになったという話である。為替を当てる話ではなく、下がり方の癖が変わったという話だと受け取るのが正確だ。

AIショックの種類によって円の働きは違う

今回のように株が売られ、米国債が買われる局面では、米国の金利が下がる。日米の金利差が縮み、円は買われやすい。これは教科書どおりの動きだ。本当の試金石は別の型にある。AI向けの設備投資が景気を過熱させ、長期金利が上がるなかで株が下がる局面である。株も債券も売られる形では、円が守りになるかどうかは未知数だ。今回の分析は、この型でも円の急落は起きにくくなったと見ている。ただ、実際の相場で確かめられた回数はまだ少ない。結論を出すには、数回の相場を見る必要がある。

円という保険は持つ人の立場で効き目が違う

独自の視点として、円の保険機能は立場で意味が変わる点を挙げたい。ドルで株を持つ海外の投資家には、円は株安の備えになる。だが日本の輸出企業にとって、円高は海外での稼ぎを目減りさせる。2024年8月には円が急騰し、日経平均が1日で12%超下げた。円高が株安を大きくした例である。つまり日本の株を持つ人は、株安と円高の両方に打たれうる。円は世界の投資家には保険でも、日本国内の事業者には重しになる。保険料を払う側と受け取る側が、同じ国に混在しているのである。

ビジネスへの影響

為替は一つの予想に決め打ちしない

訪日客に頼る宿泊や小売は、円が強くなると外国人客の割安感が薄れる。一方、海外から食材や機材を仕入れる事業は、円高で原価が下がる。自社がどちら向きの体質かを、まず数字で確かめたい。たとえば円が10%動いたときに、売上と原価がそれぞれ何%動くかを試算する。それだけで、予算の甘い部分が見える。円高と円安の両方の場合の計画を、あらかじめ一枚ずつ作っておくと、急な変動でも慌てずに済む。

余裕資金では円の持ち分を点検する

外貨建ての株や債券を持つ会社は、株安に円高が重なると、評価額が二重に減る。逆に、円の現預金は株安の局面で価値が保たれやすい。ただし円高は日本株の重しにもなる。外貨資産の為替ヘッジ(=為替の変動を契約で固定する手当て)をどこまでかけるかは、費用と見比べて決めるべきだ。今回の分析はあくまで一つの見方である。結論を急がず、四半期ごとに前提を見直す運用が現実的だ。

値決めと契約に為替の逃げ道を入れる

海外客向けの料金を外貨で示す事業は、為替が一定の幅を超えたら改定できるプランや条項を用意しておく。仕入れ契約でも、同じように、幅を超えたら価格を協議する取り決めを入れる。為替が落ち着いているときほど、この種の条項は交渉しやすい。相場が荒れてから動くより、平時に整えるほうが安くつく。

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