円安でも宿泊単価は国で明暗、ホテルが問われる価格設計

円安でも宿泊単価は国で明暗、ホテルが問われる価格設計

ニュースの概要

ホテル業界の集計によると、2026年1〜9月の全国の平均客室単価(ADR=1室あたりの平均販売価格)は、2024年の同じ時期に比べて円建てで約2.1%上がった。ところが同じ価格を中国元に直すと約8%下がり、韓国ウォンでは約5%上がっている。8月の全国平均は約1万1,500円で、伸びは0.9%にとどまった。対象は17,112施設である。円安は一律に日本を安くするわけではなく、訪日客の出身国の通貨によって、宿泊費の感じ方が大きく違うことが数字で見えてきた。

引用元: 訪日旅行で円安の恩恵、ホテル業界では国・地域別の価格差が顕在化(HotelBank)

分析・見解

同じ宿泊料金が通貨ごとに違う価格に見える

まず押さえたいのは、ホテルの値札は円で付いているのに、客が見ているのは自国通貨に直した金額だという点である。円建てで2.1%上がった宿泊料金は、元に直すと8%下がった。ウォンに直すと5%上がった。同じ部屋、同じ日、同じ料金でも、中国の客には安く、韓国の客にはやや高く映っている。

円安という言葉は一つだが、中身は通貨ごとにばらばらである。元は円に対して強く、ウォンは円と近い動きをした。この差が、そのまま体感価格の差になる。

円の上昇率が小さいのは値上げの余地が残る証拠

8月の全国平均は約1万1,500円で、上昇率は0.9%だった。数字だけ見ると小さな伸びである。しかし物価全体が上がる中で、宿泊料金がほとんど動かなかったということは、人件費や光熱費の上昇分を十分に転嫁できていない施設が多いことを示す。

一方で、元建てで8%下がった市場の客から見れば、日本はまだ安い旅行先である。つまり、値上げに耐える余力はある。それでも上げ幅が小さいのは、施設側が稼働率を守ろうとして、様子見の価格を付けているからだろう。ここに、価格設計の遅れが潜んでいる。

2024年との比較が示す、ホテル間の格差拡大

全国平均は、都市ホテルと地方の宿を混ぜた数字である。実際には、東京や京都の中高価格帯は大きく上がり、地方の小規模施設はほぼ横ばいという二極化が進んでいる可能性が高い。平均が2.1%でも、上位の施設は10%以上、下位は据え置きということは十分あり得る。

航空業界は、この問題を早くから経験してきた。座席は同じでも、国ごとに運賃を変え、為替が動けば即座に調整する。ホテルはまだ、全世界で同じ料金を並べる施設が多い。この差が、収益の取りこぼしを生んでいる。

為替だけでは決まらない、客の国別の財布事情

ただし、元建てで安いからといって中国客が増えるとは限らない。航空座席の供給、ビザの手続き、旅行先としての人気、団体か個人かといった要素が重なる。為替はあくまで、背中を押す力の一つにすぎない。

韓国客は距離が近く、短期の旅行が多い。料金が5%上がっても、週末の需要は崩れにくい。反対に、遠方の欧米客は旅行日数が長く、1泊の値段より総額で判断する。国ごとに、何を重く見るかが違うのである。

ビジネスへの影響

国別に料金を変える前に、予約元の国を把握する

まず必要なのは、自社の客がどの国から来ているかを、予約経路ごとに数字で見ることだ。予約サイトの管理画面や自社の宿泊システムで、国籍別の泊数と平均単価を月ごとに並べるだけでも十分である。

そのうえで、元建てで割安感が強い市場には、連泊や朝食付きなど、単価を上げやすい組み合わせを提案する。値札を変えるより、内容を足して総額を上げるほうが、客に受け入れられやすい。

為替の変動に合わせて料金を見直す仕組みを持つ

円相場が5%動けば、客の体感価格も5%動く。月に一度、主要な通貨での見え方を確認し、必要なら週末や繁忙日の料金を調整する運用を決めておきたい。担当者を一人決め、見直す基準を紙一枚にまとめるだけで違う。

また、最近は海外の予約サイトが自動で通貨換算を表示する。自社の公式サイトでも、元やウォンの目安金額を併記すれば、比較される場面で不利になりにくい。

小規模な宿こそ、値上げを恐れず、体験や食事の価値を言葉にして伝えてほしい。平均より安く売り続ける理由は、為替の面では見当たらない。

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