城が観光の核になる時代、石川の寄与度に学ぶ集客設計

城が観光の核になる時代、石川の寄与度に学ぶ集客設計

ニュースの概要

日本経済新聞は、城が地域観光の中心的な存在になりつつあると報じた。城を訪れる人が地域全体の観光消費にどれだけ貢献しているかを示す寄与度で、石川県が全国首位になったという。注目すべきは、外国人旅行者の来訪が先に増え、その人気が評判となって日本人客を引き寄せる流れが見えてきた点だ。かつて城は、歴史好きが静かに訪れる場所という位置づけが強かった。いまは宿泊、飲食、買い物まで波及する観光の起点として、地域の稼ぐ力を左右する存在へ変わりつつある。

引用元: 城が地域観光の核に 寄与度は石川トップ、インバウンドが国内客呼ぶ(日本経済新聞)

分析・見解

寄与度で石川が首位に立った理由を読み解く

寄与度とは、ある観光資源が地域の観光全体にどれだけ貢献しているかを示す指標である。石川が首位ということは、金沢城や兼六園だけでなく、周辺の街並みや食と組み合わさって、城が滞在の理由になっていることを意味する。

城単体の入場者数が多いだけでは、寄与度は高くならない。城を見た後に茶屋街へ歩き、海鮮を食べ、泊まるという一連の動線が地域にあって、初めて数字に表れる。城は入口であり、財布が開くのは周辺だ。

インバウンドが国内客を呼ぶという逆転の構図

従来の観光は、まず国内客が定着し、後から外国人が加わる順番が多かった。今回の指摘は、その順番が逆になっている点に特徴がある。外国人旅行者が動画投稿や口コミで城を発信し、それを見た日本人が「そんなに人気なら行ってみよう」と動く。

身近な例が、姫路城の混雑である。海外での知名度が上がった結果、国内の団体や個人旅行の需要も押し上げられた。地元の人が当たり前と思っていた場所が、外からの評価で再発見される。これは地域にとって、広告費をかけずに得られる大きな追い風となる。

城が持つ「体験の物語性」が集客力の源泉

城が強いのは、見て分かる象徴性と、歴史という物語を同時に持つからだ。海外の旅行者は、日本らしさを一目で伝える写真を求める。国内客は、大河ドラマや歴史小説で得た知識を現地で確かめたい。二つの動機を一つの場所で満たせる資源は多くない。

さらに、天守や石垣は夜間のライトアップや甲冑体験、茶会などと組み合わせやすい。滞在時間を延ばす余地が大きく、宿泊につなげやすい点も強みだ。温泉や寺社は季節で需要が偏るが、城は桜や紅葉、雪景色と、年間を通じて見せ方を変えられる。

一極集中の裏で進む混雑と維持費の問題

人気が高まれば、課題も生じる。石垣や木造建築は、大勢が歩けば傷む。入場者数の増加が、そのまま保全費の増加につながる。入場料だけで修繕を賄えない自治体は多く、外国人向けの二重価格や事前予約制の導入を検討する動きも出ている。

また、特定の城に人が集まると、周辺住民の暮らしを圧迫する。観光の恩恵を地域全体で分けつつ、混雑を和らげる設計が欠かせない。今後は、有名な城に加えて、近隣の小規模な城跡や城下町へ客を分散させる工夫が、地域の持続性を左右するだろう。

ビジネスへの影響

宿泊・飲食事業者は城を起点に滞在を設計する

城の寄与度が高い地域では、観光客の滞在時間が長くなる傾向がある。宿泊業者は、早朝の城内見学や夜のライトアップ鑑賞をセットにした宿泊プランを組みやすい。飲食店は、城から徒歩圏の営業時間を見直し、夕方以降の需要を取り込むことが有効だ。

まず自店の位置を、城からの動線の上に置いて考えるとよい。城を見終えた人が次に行きたくなる場所を、先回りして用意することが売上を左右する。

自治体と交通事業者は混雑の分散に投資する

人気の城に客が集中するほど、満足度は下がりやすい。自治体は、時間帯別の予約枠や混雑状況の発信で、来訪を平準化できる。交通事業者は、周辺の城跡や城下町を結ぶ周遊切符を設ければ、一か所への集中を和らげられる。

外国人向けの多言語案内は、国内客にも役立つ。解説を充実させれば、再訪や口コミにつながる。

口コミを前提にした情報発信を整える

インバウンドが国内客を呼ぶ流れでは、現地の写真や動画が最大の宣伝になる。撮影しやすい場所の整備や、投稿を促す仕掛けは費用対効果が高い。事業者は、公式サイトの更新だけでなく、地図サービスの情報や口コミへの返信を日常業務に組み込みたい。

関連記事