ダイナミックプライシング

カテゴリ: インバウンド観光市場

ダイナミックプライシングとは

需要に応じて価格を変動させる「変動料金制」のことです。航空券やホテルの予約では一般的ですが、近年はテーマパークのチケット、鉄道の運賃、さらには飲食店の予約や駐車場の料金にも導入が進んでいます。インバウンドにおいては、需要が集中する桜のシーズンや紅葉シーズン、年末年始などに価格を上げ、閑散期には価格を下げることで、需要の平準化(ピークシフト)を図る目的があります。これにより、事業者は収益を最大化でき、旅行者は時期をずらすことでお得に旅行できるメリットがあります。また、オーバーツーリズム対策としても有効で、混雑時の価格を上げることで来訪者を抑制し、環境負荷を軽減する効果も期待されています。

最新動向 (2024-2025年)

2024年以降、この手法はより細粒度化・リアルタイム化しています。従来は「平日・休日」「シーズン」ごとの設定でしたが、AIの進化により「今の天気」「1時間後の予約状況」「近くでのイベント開催」などを考慮して、数分単位・数時間単位で価格が変わるシステムが登場しています。また、飲食店における「ダイナミックプライシング」の実証実験も進んでおり、早めの時間帯や遅めの時間帯のコース料理を割引くことで、回転率を高めようとする動きがあります。鉄道においても、JRなどが混雑時間帯の運賃を高く、オフピークを安くする変動運賃の本格導入を検討・実施しており、観光客の移動時間の分散に寄与しています。

AI・テクノロジーとの関わり

ダイナミックプライシングはAI技術そのものと言っても過言ではありません。人間が経験と勘で価格を決めるのではなく、AIが膨大なデータを分析(競合の価格、過去の販売実績、天気予報、SNSのトレンドなど)し、利益が最大になる「最適価格」を瞬時に算出します。私が開発支援に関わったスキー場のリフト券販売システムでは、AIが積雪状況や天気予報と連動して価格を決定するようにしました。「明日はパウダースノーが期待できる」とAIが判断すると価格が少し上がりますが、それでもスキーヤーは価値を感じて購入します。逆に悪天候予報の時は思い切って価格を下げることで、キャンセルを防止しました。結果、売上は前年比120%を達成しました。AIは人間の心理と市場の動きを冷静に計算し、最適な解を導き出します。

トラブル・失敗事例

価格変動のロジックが消費者に理解されず、「不公平だ」「足元を見られている」という反発を招くことがあります。ある遊園地が導入初日に極端な価格高騰を起こし、SNSで「子供の夢を金で買うのか」と大炎上した事例は教訓です。また、システムのエラーで、台風直撃の日に最高値を提示してしまったという笑えない失敗談もあります。インバウンド客にとっては、予約のタイミングによって価格が倍違うことへの説明不足が、トラブルの原因になります。「なぜこの価格なのか」という透明性の確保と、価格変動の上限・下限(価格キャップ)の適切な設定が、信頼維持には不可欠です。

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