訪日客の9割超が旅先で生成AIを使う時代、予定外の来訪を取り込む観光事業者の備え方

訪日客の9割超が旅先で生成AIを使う時代、予定外の来訪を取り込む観光事業者の備え方

ニュースの概要

博報堂クロスバウンド・ビジネス・ラボが、訪日旅行中の生成AI利用を5カ国で調べた。利用した人の割合は、韓国92.7%、タイ99.5%、米国94.2%、中国95.6%、インド98.5%で、すべての国で9割を超えた。さらに利用者の31.3%は、AIの影響で当初予定になかった場所や店、体験を足したという。20.0%は、検討する商品やブランドが変わったと答えた。旅行の計画段階だけでなく、現地での行き先選びや買い物の判断にまでAIが入り込んでいる点が、今回の結果の要点である。

引用元: 訪日外国人の生成AI利用は9割超、予定外の訪問先追加や購買行動にも影響(PR TIMES)

分析・見解

国による差が小さい九割超は、AIが旅の標準装備になった証拠

今回の調査で目を引くのは、国ごとの差が小さいことだ。最も低い韓国でも92.7%、最も高いタイは99.5%に達する。言語も文化も違う5カ国が、ほぼ同じ水準に並んだ。生成AIを使うことが特別な行動ではなく、地図アプリや翻訳アプリと同じ「持ち物」になったと読める。

ただし、調査の対象は実際に訪日した人である。AIに慣れた層ほど回答しやすい可能性もあり、数字は少し割り引いて見るのが妥当だ。それでも、傾向の強さは疑いようがない。

三人に一人が予定を変える。検索よりも相談に近い使われ方

利用者の31.3%は、AIの影響で予定外の場所や店、体験を足した。これは検索とは違う使われ方を示している。検索は、自分が知っている言葉で調べる行為だ。一方、生成AIには「雨の日に子連れで行ける所は」「ラーメン以外の名物は」と、曖昧なまま尋ねられる。返ってくる答えには、検索では出会わなかった候補が混ざる。

地図アプリや口コミサイトも、旅先の行動を変えてきた。ただ、それらは一覧から自分で選ぶ道具だった。AIは候補を絞り、文章で薦める。選択肢が減る分、薦められた先に客が集中しやすい。

購買の二割に及ぶ影響で、店頭に並ぶ前の勝負が始まる

購買への影響も見逃せない。20.0%が、検討する商品やブランドが変わったと答えた。化粧品、医薬品、菓子などは、訪日前に買う物を決めて来る人が多い分野だと言われてきた。そこにAIが割り込む。「肌が敏感な人向けの日本の日焼け止めは」と聞けば、名前が挙がる数品が事実上の候補になる。AIの回答に載るかどうかが、広告や陳列より前の勝負になりつつある。

AIに薦められる条件は、正確で新しい公式情報があること

では、AIはどの店を薦めるのか。基本は、ウェブ上で確認できる情報である。営業時間、定休日、多言語のメニュー、支払い方法、アクセスが古かったり、公式ページになかったりすれば、薦められにくい。

さらに怖いのは誤情報だ。AIの回答は断定口調に聞こえるため、旅行者は疑わずに足を運ぶ。閉まっていた、メニューが違った、となれば、失望は一軒の店ではなく地域全体への評価に向かう。情報を整えることは、集客策であると同時に、地域の信頼を守る手でもある。

ビジネスへの影響

まず公式情報をAIが読み取れる形に直す

営業時間、定休日、料金、予約方法、アクセス、対応言語、決済手段を、公式サイトに文章と表で書く。これがすべての土台になる。あわせて、構造化データ(=検索やAIが内容を読み取りやすくする目印)を入れ、地図サービスの登録内容も同じ表記にそろえる。祝日や臨時休業の変更は、その日のうちに反映する。古い情報が一つ残るだけで、AIの回答全体の信頼が崩れるからだ。

予定外の来訪を受け止める準備をする

三人に一人が予定を足すなら、予約なしの来訪は今後も増える。席に少し余裕を持たせる、三十分で楽しめる体験メニューを用意する、混雑時の案内札を多言語で出すといった小さな備えが効く。外国語の案内は機械翻訳でも出発点になるが、商品名や地名の表記は一つに統一したい。表記がぶれると、AIが別の店と取り違えることがある。

効果は「AIで知りましたか」の一問から測る

まず来店時のアンケートに、知ったきっかけとして生成AIの選択肢を加える。次に、月に一度、主要なAIへ自店の周辺で探す質問を投げ、名前が出るか、内容が正しいかを記録する。費用はほとんどかからない。一か月続ければ、直すべき情報が見えてくる。大きな投資の前に、この小さな観測から始めるのが現実的だ。

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